2011/08/18

Fernandes JS100

変形である。 V である。 

'84年 大学の軽音学部仲間で浜田麻里コピー・バンドを結成した。
いや結成したというより`させられた'、能動ではなく受動である。
軽音ではJ・ベックやG・ムーア、A・D・メオラなど、主にインストを演っていた。
他のバンドは軽音(けいおん)の名の通り、
聖子ちゃんバンドだのサザン・バンドだの、軽~い音楽を演る連中ばかり、
一般人にとって訳の解らないインスト・バンドよりウケが良いのは当然だった。

ある時うちのベーシストが
「女ヴォーカルを入れてLiveでウケてみたい。」
などとふざけた事を言い出した。
「何を言ってるんだ!やろ~ぜ!」
最大に抵抗しつつも即決した。
女ヴォーカルったって、聖子やら明菜やら杏里を演るつもりは無い。
洋楽、パット・ベネターやスージー・クワトロで軽~い奴らをぶっとばしてやろうぜ。
まだまだ血の気の多い20代前半であった。

軽音の女性部員を入れても面白くない。
早速 Player誌のバンド・メンバー募集欄に葉書を出した。
「♀ヴォーカル募集、当方♂4人・ハード・ロッカー、プロ指向ではありません。」
雑誌に掲載されると早々に連絡がきた。
最寄の駅で待ち合わせるとロン毛ミニスカのイケイケ風おネ~ちゃんがやってきた。
近くの喫茶店に入り面談。開口一番、おネ~ちゃんは
「あたし、浜田麻里を演りたいんです!」

??? 誰ソレ?

するとうちのベースが
「知ってる!そういえば君、浜田麻里に似てるね!」

??? そうなの? チンプンカンプン

洋楽に首っ丈な自分としてはその押しの強いおネ~ちゃんの熱意が伝わってこないのだが、
うちのベースが目を輝かせているのが気になる。
するとおネ~ちゃんはウォークマンを取り出し聴いてくれと言う。
随分と用意がいいのねと思いながら聴いてみると、ぉお、ハード・ロックしてるじゃん。
ギター・ソロはカッコ良いしドラムもパワフル、それにも増してヴォーカルが強力、シャウトしまくりじゃん!
後に知る事になるのだが、そのアルバムのギターはかの有名なセッション・プレイヤー、マイケル・ランドウだし
ドラムはラウドネスの樋口宗孝であった。
でも…、このおネ~ちゃんに唄えるのであろ~か?
疑いの眼差しを察したのか、バッグから別のカセット・テープを取り出した。
「前のバンドであたしが唄ったやつです。聴いてください。」
用意周到・ヤル気満々なおネ~ちゃんであった。

そんなこんなでバンド・メンバーは決定した。
本意ではないが邦楽ロック(ジャパ・メタ?)を演る事となった。
当時リアにハムを載っけた自前改造ストラトがメインだったのだが、
この浜田麻里そっくりさんのド派手おネ~ちゃんに対抗する為、
目立つ変形ギターを、と購入したのがこのJS100である。
(歳を取ると前置きが長い、つ~か余計な話が多いね、反省)

フェルナンデスのジャクソンVコピー、 R・ローズ・モデル。
R・ローズは知っていたがあまり興味がなかった。
V と言えば M・シェンカー、中高生の頃 R・ブラックモアに次ぐ師匠だった。
しかし貧乏大学生にギブソンは買えない。
それより浜田麻里の楽曲でアーミングが必要な場面が多々ある。
ド派手・V・アーム、この3点を満たしていた事が購入の決め手であった。
コピー品といっても定価10万円(値引いてもらっても9万円以上、当時の値引きは渋かった)
は貧乏大学生には痛い出費であったが、このナウいおネ~ちゃんに対抗する為には仕方がない。

変形という以外コレといって特徴のあるモノではないが、
アームはファイン・チューナーが登場する前のフロイド・ローズ・ライセンス、
フェルナンデスFRT-3。ところがネック取り付けアングルの影響で、
ストラトと比べとんでもなく高い位置にフローティングしている。
これが功を奏しアーム・アップが無限にできる、弦が切れるまで上げられるのだ。
エモーショナルな変態奏法もお手のもの、嬉しい誤算であった。
オマケにネック・ジョイントはスルー・ネック? と勘違いするほど薄く、
V型ボディーと相まって22Fに軽々アプローチできる。
V ってこんなに弾き易かったのか、新たな世界を発見した次第である。

ただし木部は残念賞。マホガニーなそのボディーは10ピースもの継ぎ接ぎ。
ま、本物の1/3の価格だから仕方がない。塗り潰しの極厚ウレタン塗装なので目立たないし、
まさか多少の事で分離してバラバラになる事もなかろう。

浜田麻里ジャパ・メタ・コピー・バンド用に買った V ではあったが、その演奏性の高さについ手が出てしまい
メインのインスト・バンドでもストラト改やESPレスポを差し置いて使いまくり、
周囲の嘲笑を誘った事は今ではそっとしまって置きたい恥ずかしい思い出である。 ← なら公開するな